PROJECT

「パルナソスの池」は、昨年に続いて池袋を舞台にしたアートプロジェクト「池袋モンパルナス2.1 -水脈を巡って-」を開催いたします。本年はこのエリアに張り巡らされた文化の水脈を辿るように4会場(TURNER GALLERY、旧春日部洋アトリエ、WACCA IKEBUKURO、コ本やhonkobooks)で展覧会を同時多発的に行います。
《山々を泳ぐ方舟》六甲⇔池袋 in TURNER GALLERY:
ターナー色彩株式会社が南長崎にて運営しているターナーギャラリー、本会場はパルナソスの池にとって縁の深い重要な発信拠点になっています。本展では、2021年秋に開催された芸術祭「六甲ミーツ・アート芸術散歩2021」にて発表したインスタレーション《山々を泳ぐ方舟》を展示します(本作は同展において主催者特別賞を受賞しました)。「廃虚の女王」と呼ばれる旧摩耶観光ホテルにて滞在制作した作品群、モダニズム様式の丸窓に仮設したステンドグラス、廃墟に凄まう者たちを仮想した写真ドローイング、雨漏の水を受 け止めるようにして描いたキャンバス作品などを展示します。

池袋モンパルナス 2.1 水脈を巡って スピンオフ企画

展覧会会期中には池袋モンパルナスと本家パリのモンパルナスをつなぐ試みとして、100年以上の歴史を持つ版画工房idemで活躍する渥美明子氏とzoom対談を行いました。対談を文字起こししたものを公開します。
公開制作・旧春日部洋アトリエ:
池袋モンパルナス時代から現存する旧アトリエをリノベーションした春日部幹建築設計事務所にて、パルナソスの池による絵画作品の公開制作を行います。この会場は、元は画家・春日部洋の旧アトリエでした。また、春日部の叔父には水彩画家の春日部たすくがいます。築80年を超えるアトリエには当時の雰囲気や建築意匠が残っており、池袋モンパルナスのアトリエを見学する貴重な機会にもなるでしょう。かつての制作環境の中で生まれる新しい作品に挑戦します。
エスカレーターペインティング @ WACCA IKEBUKURO:
WACCA IKEBUKUROの7周年記念事業として、商業施設の館内で作品展示および新作の制作を行います。新しい解釈でエスカレーターを活用したペインティングをはじめ、昨年ターナーギャラリーで発表した巨大壁画《優美な死骸2.0》の再展示、池袋モンパルナスへのオマージュ作品など、施設と文化史とアートの共創で彩られる館内をお楽しみ頂けます。WACCAは、75年続いた映画館「日勝館」の精神を受け継いで2014年に誕生したコミュニティ型商業施設です。
コ本や honkbooks:
パルナソスの池が、2021年秋に発表したインスタレーション《山々を泳ぐ方舟》(「六甲ミーツ・アート芸術散歩2021」)の記録集出版を目指して、プロポーザル展を開催します。遠藤文香によるマヤカンの未公開写真の展示とスライド上映、編集プランニングをコ本やが担当し、記録集のプレゼンテーションを行います。また、六甲やマヤカンでの経験についてパルナソスの池によるオンライン配信も不定期に開催します。池袋に拠点を持つ「コ本やhonkbooks」は、映像や書籍の制作、展覧会やイベントを企画するメディアプロダクションとしても活動するプラクティショナーコレクティヴです。
「パルナソスの池」のメンバー淺井裕介、高山夏希、松井えり菜、村山悟郎は、現在近隣の千早町や椎名町に拠点を持つアーティストである。そして本展に絵具と場所を提供してくれたターナーギャラリーは南長崎に位置している。これらは「池袋モンパルナス」のエリアにぴたりと符合する。この偶然の事実から、展覧会を起動する。  かつて大正後期から第二次大戦の終戦頃にかけて、この地は池袋モンパルナスと呼ばれる芸術家達の溜まり場であった。湧き水が豊富な池々と低湿地帯。20世紀初頭の池袋駅の開設。巣鴨刑務所(旧東京拘置所)を近隣に抱える土地柄。安い家賃でありながら利便性の高かったこの地域には、芸術文化の活動拠点、あるいは地方出身者や多くの外国人が住まうなど、多様な背景を包み込む場所だった。戦後には闇市が立ち、GHQがスガモプリズンを接収、「帝銀事件」の舞台となり、中核派の「前進社」がアジトを置くなど、きな臭い気配を漂わせるいっぽうで、漫画家の伝説的拠点「トキワ荘」が建っていたのもこのエリアである。  池袋モンパルナスは、芸術動向として一つのまとまりや主義主張を展開したものではなく、時代の地政が多様な文化の溜池として働いたものであろう。美も醜も共存し、強烈な欲動が湧き出す泉だった池袋。しかし現在は開発が進み、かつての面影は薄まっている。池袋モンパルナスもトキワ荘も歴史化され再評価のフェーズへと移り、地方自治のジェントリフィケーション戦略に組み込まれているように見える。こうした流れのなかで、この地域がもつ偶有性を再び活用することは可能だろうか。私たちの試みはそのような位置付けにおいて意味を持つ。  果たして、この展覧会がどこまでの展開力を持つか。それは、この地域の文化的な豊かさを高め、共につくることを通して創作の魅力を発信することからしか始まらない。作品同士の文脈を結びつけるキュレーションはここには存在しない。在るのは、偶然の事実と、作家同士の信頼関係だけである。共同制作の壁画とサロンスタイルの展示は、その偶然と信頼のを留めるために造られた貯水池だ。この現在進行形の芸術活動が、多くの人の水辺となることを願って。

池袋モンパルナス 2.0 パンフレット

パンフレット画像
2020年に開催された池袋モンパルナス2.0 の展覧会を記録したパンフレットを一部抜粋して公開します。

制作過程ムービー