PROJECT

「パルナソスの池」のメンバー淺井裕介、高山夏希、松井えり菜、村山悟郎は、現在近隣の千早町や椎名町に拠点を持つアーティストである。そして本展に絵具と場所を提供してくれたターナーギャラリーは南長崎に位置している。これらは「池袋モンパルナス」のエリアにぴたりと符合する。この偶然の事実から、展覧会を起動する。  かつて大正後期から第二次大戦の終戦頃にかけて、この地は池袋モンパルナスと呼ばれる芸術家達の溜まり場であった。湧き水が豊富な池々と低湿地帯。20世紀初頭の池袋駅の開設。巣鴨刑務所(旧東京拘置所)を近隣に抱える土地柄。安い家賃でありながら利便性の高かったこの地域には、芸術文化の活動拠点、あるいは地方出身者や多くの外国人が住まうなど、多様な背景を包み込む場所だった。戦後には闇市が立ち、GHQがスガモプリズンを接収、「帝銀事件」の舞台となり、中核派の「前進社」がアジトを置くなど、きな臭い気配を漂わせるいっぽうで、漫画家の伝説的拠点「トキワ荘」が建っていたのもこのエリアである。  池袋モンパルナスは、芸術動向として一つのまとまりや主義主張を展開したものではなく、時代の地政が多様な文化の溜池として働いたものであろう。美も醜も共存し、強烈な欲動が湧き出す泉だった池袋。しかし現在は開発が進み、かつての面影は薄まっている。池袋モンパルナスもトキワ荘も歴史化され再評価のフェーズへと移り、地方自治のジェントリフィケーション戦略に組み込まれているように見える。こうした流れのなかで、この地域がもつ偶有性を再び活用することは可能だろうか。私たちの試みはそのような位置付けにおいて意味を持つ。  果たして、この展覧会がどこまでの展開力を持つか。それは、この地域の文化的な豊かさを高め、共につくることを通して創作の魅力を発信することからしか始まらない。作品同士の文脈を結びつけるキュレーションはここには存在しない。在るのは、偶然の事実と、作家同士の信頼関係だけである。共同制作の壁画とサロンスタイルの展示は、その偶然と信頼のを留めるために造られた貯水池だ。この現在進行形の芸術活動が、多くの人の水辺となることを願って。

池袋モンパルナス 2.0 パンフレット

パンフレット画像
2020年に開催された池袋モンパルナス2.0 の展覧会を記録したパンフレットを一部抜粋して公開します。

製作過程ムービー